感性的価値を重視したプロモーションについて by Ken Ishigami

f:id:artbaseproject:20171030192031j:plain

 

2回目の投稿をします、Art Base Projectの石上賢です。^ - ^

上の写真はベネチアの飛行機の中でArt Base Projectの映像ディレクターHiroshiが撮影した写真です(^ ^)現在のホームページにも使っています!

まだブログの投稿になれず、何を書いたらいいのかと迷っている状況です!笑

 

Art Base Projectを本格的にスタートさせたのは昨年の11月からで、それまでは、個人でアーティストの海外での展覧会のサポートを大学1年生から行ってきました。具体的には、イタリアのヴェネチアやニューヨークなどでの展覧会を企画から交渉、プロモーション動画の制作までを行っていたのですが、一人ではできることが限られていたので、昨年から国内外の様々なメンバーを誘ってチームを結成し現在に至ります!!

 

そもそもなぜArt Base Projectを立ち上げたのかという理由は第1回目の投稿でお伝えしたので、興味のある方はそちらを見て頂ければと思いますが、今回の投稿では現在私たちが何をしているのかを少しお伝えできればと思います。

 

現在約10以上のプロジェクトを同時に行っており、全ての詳細をお話することはできないのですが、これまでの経験やパートナーであるYujiと話し合う中で行き着いたプロモーションを行う上で大切にしている項目を幾つか挙げて説明をしたいと思っています!読んでくださる方に、何か情報構築や発信などプロモーションにおいて参考になれば嬉しいです( ´ ▽ ` )ノ

 

 

感性的価値について

 

 まず、芸術や工芸が有している価値は感性的な価値(美の価値)にあると考えています。美の価値は人の情緒を表し、あるいは情緒に訴えかけます。美術作家は必ず、自己流の美意識をもって制作にあたっているものと思われます。そして、鑑賞者や顧客はその美意識を鑑賞に伴って観察し、うかがい知れたときにはじめて評価が生まれます。作家の情緒的で感性的な価値である美意識がどれほど傑出したものであるかに加えて、その表現の方法や技法がどれほど高度かつ適切かによって、鑑賞者に与える情緒・感性的な影響は変わってきます。

 

 たとえば、伝統的な工芸品として日本工芸の代表に位置する漆塗りを例にとってみましょう。漆塗りは高度な技術を習得する必要のある代表的な工芸であり、また主に椀などの実用品を制作する際に用いられています。そこで、漆塗りといえば「高度な技術」や「実用品」といったところに注目がなされ、作家の表現的な価値は乏しいように感じられがちです。しかし、たとえば漆塗りの椀が神に貢ぎ物をする際に用いられる神聖な道具だったということを考えると、漆のもつ光沢感と厳かな雰囲気が日本の神々に対する神聖さを象徴する日本人独特の美意識から発した一種の表現として用いられたことがわかります。つまり、漆器そのものが日本人の感性を表現し、また日本人の感受性に訴えかけるものとしての価値を有しているのです。同じく儀式に用いられる器であっても、日本のそれと世界のそれがまったく異質であることは、それぞれの国の神聖さに対する美意識、つまり感性が異なっていることを端的に表しています。このような点に留意すると、漆器はそれ自体が日本の感性を表現した工芸品であり、たとえそれを制作した作家が情緒的な価値を付与していなくとも、立派に感性的な価値を有しているといえるのです。

 しかし、こうした価値を有している漆塗りの作品について、いったいどれだけの情報が社会に出回っているでしょうか。漆塗りが高い技術をもって制作されるものであることは周知されてはいるものの、そこに込められた情緒的価値は正当に発信されていないというのが現状であると考えています。

 

 

感性的価値の情報発信の重要性

 

 情報化社会になるに従って、CM、雑誌、インターネット、SNSなど、社会には実に多くの情報コンテンツが提供されるようになりました。人々はこのようなコンテンツを介して常に情報に接し、利用するサービスや購入する商品を決定しています。情報が強大な力をもって支配しているこの社会状況においては、いかなるサービスや商品を展開するにも、情報を整備し適切に発信していなければ、競合相手との関係で優位に立つことはできません。情報化社会であるということは、情報を正しく展開している者がより多くの注目をさらい、情報のない者からどんどん搾取していくことができるシステムが完備されているということだと思います。そこではいかに優れた作品を制作していても、情報展開している者との競合においては勝ることが難しいという理不尽な結果が生まれてしまいます。しかし、裏を返せば、市場が求めているのは優れた作品の情報であるということになります。情報さえ組み込まれていれば、優れた作品にはそれに見合った数の注目が付いてくるということになります。それは非常に大きな可能性をもたらしてくれているシステムでもあるのです。

 

 美術作品を市場に展開させるために構築すべき情報は、作品の感性的な価値を説明したコンテンツです。情報化社会において美術品が評価されていくためには、ただ良い作品を生み出すだけではなく、なぜそれが良い作品といえるのかを説明する情報を市場に展開していくことが必要です。美術品が他の工場から生み出された物よりも良いといえるのは、職人技による差異もさることながら、その作品が単なるプロダクトではなく感性的な価値を付与されたものだからです。その感性的な価値、すなわち人々の心に訴える素晴らしいポイントはどこにあるのか、それを情報として構築し発信することができれば、人々の下す評価は格段に良いものになるでしょう。このような感性的な価値を有さない、あるいは乏しい作品もあるかもしれませんが、もし作品に感性的な価値が見出せるのであれば、それは市場に知られなければ損になります。そして、感性の時代として想定される次代においてはこの感性的価値こそが、市場に提供するべき本命的な情報になってくるのです。

 

また美術作品だけでなく、どんなプロダクトでもこの情報過多な現代では、商品の機能や特性よりも、その商品の思想やビジョンなどの商品の背後にあるストーリーこそ重要であると考えています。つまり、HOW(どのようにつくっているか)やWHAT(機能や商品がなんであるか)よりもWHY(なぜそれを創るのか)という問いに答える情報を構築し、発信することが必要ではないでしょうか。

 

情報戦略の方法

 

 今日において優れた成績や評価を残している作家は、いずれもこの情報戦略をいち早く取り入れているというのが現状です。たとえば芸術の分野においては、作家が自分自身の芸術観を自ら情報として構築・発信するのが困難である場合には、芸術観の説明を担当とする専門家をプロジェクトチームとして雇い入れたり、反対に自分自身で情報展開することができる場合には、説明は芸術家自ら担当して、代わりに作品の制作を雇用した者に担わせるなどして、組織的な活動形態をとることで創作と情報発信の両方を連動させています。最高の創作と最高の説明が相まって最高の芸術が成り立つというのが現在のアート市場における面白さでもあると思っています。

 

Art Base Projectの情報戦略

 

 ここまで概観したとおり、美術品の有する価値を市場に顕在化させるひとつの試みとして、作品の感性的な価値を情報として整理し適切に発信していくことが、今日の美術市場における必要事項となっています。そこでArt Base Projectは、美術作家の情報戦略を支える機能的なサポートとしてミクロとマクロそれぞれの視点からプロモーション事業とプラットフォーム事業を志向しています。

 

 ミクロの視点から展開される情報戦略「プロモーション」は、著名な作家たちが情報戦略として採用している情報戦略プロジェクトをArt Base Projectが担うかたちで行われる戦略です。私たちが行ったプロモーションの結果としてあるアーティトでは、例年の倍を超える個展の売り上げを達成することが出来ました!

 

 一方、今後新たに展開する「プラットフォーム」については未だ多くを語ることはできませんが、作家の情報と作品が一堂に集まるネット空間であり、リアル、ノンリアル双方の場でコミュニティーを創造し、新たなかたちのアート市場を形成しようとする事業になります。本格的には来年から実施していく予定です!

 

 Art Base Projectの情報構築と発信

 

 Art Base Projectでは作家自身が発信媒体となる情報戦略を行っています。プロモーションでは感性的価値を情報化したコンテンツと発信するために必要なコンテンツを構築し、作家に代わって情報発信を行います。また情報の構築・発信だけでなく、必要に応じて経営戦略や販売促進、広告戦略なども行っています。

 

情報構築

 

 情報の構築では、作品や作者の有する感性的価値を紐解き、その後に情報発信に必要なコンテンツを作成していきます。作成したコンテンツは多様な局面で利用が可能な万能ツールとして機能し続けていきます。またコンテンツは感性的な価値を発信していくのに適したかたちで作成される必要があります。

 

  • 作品の感性的価値を紐解く

 プロモーションにおいて最も重要なのがこの段階です。感性的価値はその作品を制作した本人でさえ言語化するのが難しいものです。Art Base Projectでは作品とその作品が属する技法を徹底的にリサーチした上で、作家自身から語られる情報を主軸として、感性的価値を共に築き表現していきます。

 作家にとっては自身の作品の価値が明確なかたちにまとめられることによってより効率的に自身の制作活動にあたることができるようになるという点でも非常に重要な作業になります。

 

  • 感性的価値を表したコンテンツ − 文章

 紐解いた感性的価値を文章化して、情報発信するためのコンテンツに落とし込んでいきます。文章は最も基本的な情報ツールであり、簡単に制作できるという点から、ニュアンスで制作されてしまうことが多く、たとえ整備されていても情報コンテンツとして機能していないことがほとんどです。どのような文章により表現するかは、どのような作品を制作するかと同じほど奥が深い作業になります。その点、この作業によって流通した情報が市場に与える影響度は自然と変わってくることになります。

 

  • 感性的価値を表したコンテンツ − 写真・映像

 作品の写真は情報として最も重要なコンテンツのひとつになります。そこでプロのカメラマンによる作家の感性的価値を意識した撮影によって、市場展開するのにふさわしい写真を作成します。また、文章よりも直感的に鑑賞者に訴えることのできるコンテンツとして映像を作成します。今日、強力な影響力をもっているSNSで発信していくのに最も適したコンテンツになります。

 

  • 感性的価値を表したコンテンツ − ホームページ

 ネット社会における住所のような存在であるホームページは、数ある情報空間の中で最も自身の情報を豊富かつ自由に掲載することができる非常に重要なコンテンツになります。ホームページには作成した情報コンテンツをすべて掲載するという情報集積場としての役割があります。

 

  • 感性的価値を表したコンテンツ – その他

 上の過程で作成したコンテンツを用いてポートフォリオやその他必要な資料を作成することができます。

 

情報の発信

  • 顧客(情報発信の相手方)の設定

 当該作品のジャンルや感性的価値の大小、価格帯から顧客として想定される階層を分析していきます。

  • リアル空間における情報発信

 当該作家の作品にとって適切な市場を分析し、当該市場において想定される顧客層に対しダイレクトに情報を発散していきます。国内外の個展や展覧会の獲得や企画などがこれにあたります。

  • ノンリアル空間における情報発信

 ネット空間やSNSなど情報化社会における情報の集積場である非現実空間に対し情報発信を行います。効果的に行うことができれば、世界を市場に変換しうる情報発信です。アーンドメディア、オーンドメディア、ペイドメディアなどそれぞれのメディア形態に即した情報展開が求められます。

 

 

おわりに

 私たちArt Base Projectが行っているプロモーションに共通している事項をまとめてみました。非常に長くなってしまいましたが、まだまだ伝え切れている部分は少ないので、これからも追い追いプロモーションについては発信していく予定です。少しでも私たちのプロモーションに興味を持たれた方がいらっしゃったらいつでも連絡して頂ければと思っています(^ ^)

最後まで長々とした投稿にお付き合い頂きありがとうございました。もっと短く書こうと思っていたのですが、なぜか長くなってしまう...